地域連携で発達障害児の早期発見・早期支援を

構想日本メールマガジン【No.919】寄稿記事

一般社団法人日本運動療育協会代表理事 岡田 達雄

発達障害児の急増という社会問題

文部科学省によると、平成19年度から29年度までの11年間で、通級*に在籍する児童生徒の中で発達障害とみられる子どもの数は約5倍になりました。(*通級とは通常学級に在籍しながら個別的な特別支援教育を受けることのできる制度)

また、全国の公立小・中学校の通常学級において、知的発達に遅れのないものの学習面又は行動面で著しい困難を示すとされた児童生徒の割合が、平成24年度の調査では全体の6.5%(男子9.3%、女子3.6%)でしたが、現在では10%を超えるといわれています。これは大きな社会問題です。

人との関わりでつまづく子どもたち

そもそも子どもはどのようにして発達するのでしょうか?幼児期の子どもは大好きな保護者との愛着形成をベースに、子ども同士の身体的で自由な遊びを通してものごとの意味を知り、社会性を身につけていきます。

子どもは誰でも「友だちと仲良く遊びたい」という感情があります。この感情が原動力となって、楽しい遊びを継続するために必要に応じて自分の気持ちを切り替えたり、他人の考えを受け入れたりすること、すなわち自己制御も学ぶのです。

ところが現代社会にはこの遊びが足りません。とりわけ先天的な脳の特性によって人との関わりが苦手な子どもは遊びに入るのが難しく、人と関わらなければ社会性の発達が遅れます。これが発達障害です。

人との関わりが好きになるスパーク運動療育

このような子どもに必要なのは人と関われるようになる感情の発達です。そこで身体能力が高く感情表現の豊かなダンサーが、『脳を鍛えるには運動しかない!(原題:SPARK)』の著者でハーバード大学医学部准教授のジョン・レイティ博士の協力を得て開発したのがスパーク運動療育です。

資格認定を受けた運動療育士がユーモアと意表を突くやり取りで子どもの気持ちをぐんぐん引っ張り一緒に体を動かして創造的に遊びます。

すると能動的な関わりの苦手な子どもの心が動き、自分の興味を追いかけ、頭と体を使って遊びをつくり、たくさんのやり取りを経験して人との関わりを楽しめるようになります。スパーク運動療育は発達障害児の早期支援に最適なプログラムなのです。

乳幼児健診から始まる地域連携の提案

日本には自治体による1歳半・3歳児健診という素晴らしい制度があります。ところが従来の乳幼児健診は知的障害や身体的障害の発見が目的で、発達障害には対応していません。発達障害のスクリーニングツール(早期発見手法)を使っている自治体は未だごく僅かです。

また乳幼児健診で早期発見ができても、その後のスパーク運動療育のような積極的に関わりを促す支援がなければ意味がありません。そして支援を受けるためには自治体が発行する「受給者証」※が必要です。

現状ではこれらの業務が連携されていないために、円滑な支援が受けられなくて困っている子どもと保護者が全国に大勢います。この問題を解決するために、今求められているのは、発達障害児の早期発見・早期支援という目的を共有する保健センター、自治体、事業者などによる地域連携なのです。

構想日本のメルマガ読者でこの問題に関心のある方、是非一緒に取り組んでみませんか。問い合わせをお待ちしています。

HP https://startup.sparkinglife.jp/
FB https://www.facebook.com/sparkinglife.jp

※構想日本編集注:受給者証は福祉サービスを利用するために市町村自治体から交付される証明書


構想日本とは

一般社団法人 構想日本は、政策の提言で終わるのでなく、実現させ社会を変える「動くシンクタンク」として、1997年に活動を始めて以来、約60の政策提言を行い、約40の政策を法律や閣議決定などの形で実現しています。

HP http://www.kosonippon.org
FB https://www.facebook.com/kosonippon